第58章 サイン

リビングに、数秒の静寂が落ちた。全員の視線が、杉浦正弘へと集まる。

杉浦正弘は杏奈を睨みつけたまま、動かなかった。

この話題に触れられるだけで、胸の奥がざわつく。苛立ちがじわじわと浮き上がってくるのを、どうにも抑えられない。

杉浦杏奈の実の両親の件を知っているのは、杉浦家の中では正弘と――そして父親だけだった。

父はずっと杏奈に負い目があった。真実を知ってからはなおさら、過保護といっていいほど彼女に気を配ってきた。

杉浦グループの10%の株。あれは、杉浦昌宗が亡くなる間際、杏奈にだけ残したものだ。これまでの埋め合わせのつもりだったのだろう。

正弘が「預かっている」ことにして十年。...

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